大幅値下げの背景とは
日本メーカーはEV(電気自動車)のラインアップに消極的で、売れ行きも伸び悩む。2025年度上半期(2025年4〜9月)に国内で販売された乗用車の内、EVの割合はわずか1.6%だった。つまり、ほとんど売れていない。
しかも販売台数が少ない乗用EVの内訳を詳しく見ると、輸入車が約半数を占める。輸入EVの場合、1車種ごとの登録台数は少ないが、ひとつのブランドが複数のEVを用意する。テスラやBYDのように、EVのみを輸入しているブランドもあり、EVの分野では輸入車比率が際立って高い。小型/普通乗用車全体に占める輸入車の販売比率は9%だが、EVに限定すると、50%に急増するのだ。

日本の自動車市場は、クルマの普及開始から60年以上を経過するために成熟しているが、EVに限ると事情は大きく変わる。未成熟な市場で主力メーカーも決まっていないため、海外メーカーとしては攻め込む絶好のチャンスだ。今のうちにEV市場でリードを奪い、足場を築けば、 今後の日本市場での戦略が大幅に有利になる。
このような状況だから、輸入EVの販売促進が続いている。BYDは2025年4月に、ATTO3の価格を従来の450万円から418万円に引き下げた。比率に換算すれば7%の値下げだ。同様にBYDドルフィンも、従来の価格は363万円だったが、現在は299万2000円だ。ドルフィンは18%の大幅値下げに踏み切った。

またBYDでは、2025年9月1日から30日まで「BYD補助金」と称して大幅な値引きも行った。たとえばBYDドルフィンのベースラインなら、価格は前述の値下げで299万2000円になり、「BYD補助金」の値引きが50万円だから実質249万2000円だ。363万円の従来価格に比べると約114万円安く、比率に換算すれば31%の実質値下げになった。
ドルフィンでは、国から公布される補助金が35万円だから、最終的には214万2000円で手に入る。自治体によっては、補助金を別途交付するから、さらに安くなる場合もある。

ちなみにこの214万2000円という価格は、ヤリスハイブリッド(G・232万1000円)、ノートe-POWER(X・232万8700円)といった国産コンパクトカーのハイブリッドよりも安い。BYDは、2025年度上半期の最終月になる9月に、激しい販売攻勢を掛けたわけだ。
BYDが値下げや値引きを積極的に行う背景には、補助金交付額が少ないことも影響している。日産サクラは軽自動車で、Xグレードの価格は259万9300円だが、国から交付される補助金額は57万4000円に達する。それがBYDドルフィンは、前述のとおり35万円でATTO3も同額だ。

今の補助金額は、電費などの向上率、メーカーの充電設備の整備状況など、さまざまな条件に応じて決められる。そのためにBYDなどの輸入車は、補助金額が日本メーカー車に比べて下がりやすく、販売面で不利になってしまう。そこでBYDは、値下げや「BYD補助金」の値引きにより、購入条件の不利を解消した面もある。












































