設計思想そのものの見直しが求められる
また、冒頭で触れたようにLCA的な観点からすると、バッテリーの寿命を伸ばすことはCO2排出減に貢献するといえる。バッテリーの劣化について、新車時と比較した劣化度合いはSoH(State of Health)というが、Euro7ではメーターにSoH表示を義務付けることも定められている。
ちなみに、初代・2代目リーフは充電率(SoC:State of Charge)のバー表示と並んで、SoHを示す12個のセグで示している。バッテリーが劣化すると、表示されるセグが欠けるため「セグ欠けが起きた(≒バッテリーが劣化した)」とオーナーは認識できるようになっている。こうした表示が、これからのEVについてはスタンダードとなるのだろう。
とくに航続距離を稼ぐためにバッテリーを多く積んだEVは、その重量からタイヤやブレーキへの負担が大きいことが容易に予想される。そうした設計思想に対するアンチテーゼとしてEuro7は機能するかもしれない。
さらに、EVと大気汚染に関するテーマは車両だけではない。アメリカ・カリフォルニア大学の調査によると、急速充電器が新たな大気汚染の原因になっているという。急速充電器は、高圧の電気を扱うため冷却用のファンが必須だ。その冷却風が、タイヤやブレーキ由来のダストを巻き上げることで、充電ステーション周辺の大気が汚れている可能性が指摘されている。
ただし、タイヤやブレーキ由来のダストについては、Euro7と同等の規制が世界中に広がれば、そもそも発生が抑えられるだろう。ただ、当面はそうしたダストはそれなりに発生しているため、急速充電器に対してダストを巻き上げないような設計の工夫が求められる。
いずれにしても、Euro7が実施されるようになると、これまでゼロエミッション(排ガスなし)とされていたEVも大気汚染への責任を負う存在になっていくことになる。エンジン車からEVへシフトしたとしても、それだけで大気汚染問題が完全解決するわけではない。
はたして、Euro7の適用によってEVの設計思想はどのように変わっていくのか。とくにブレーキダストとバッテリー劣化への規制については、EVの性能にもかかわる領域だけに注目していきたい。














































