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EVの走行中給電を東大が日本発の公道実証実験へ 。普及が進まない背景にも迫る


TEXT:桃田 健史
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東京大学大学院と民間企業各社が共同で進める「走行中給電システム」の研究が大きな転換期を迎えた。東大・柏の葉スマートシティ(千葉県柏市)で日本初の「公道での実験」を開始すると、2023年10月3日に発表された。今度、量産化に向けてどのような可能性があるのか?

 

約5年の研究を経て社会実験へ

今回の実証は、東京大学、柏市、その他の関係機関と「柏ITS推進協議会」の枠組みによる「電気自動車の走行中給電技術開発の取り組み」として実施されるものだ。

関係機関とは具体的に、ブリヂストン、日本精工、ローム、東洋電機製造、小野測器、デンソー、三井不動産、SWCC、カーメイト、そして千葉大学の研究室を指す。
2018年から、これら関係者と東大が走行中給電システムを開発してきた。
また、2019年からは国土交通省の「スマートシティモデル事業(先行モデルプロジェクト)」の選定を受けている。

こうした共同研究開発の流れを受けて、今回の実証は国土交通省「道路に関する新たな
取り組みの現地実証実験(社会実験)」として採択され、2023年10月から2025年3月まで、
柏の葉キャンパス駅西口至近の市道で実施するものだ。

 

3つのポイント

本実験のポイントは大きく3つある。
ひとつ目は、、様々な車両で使えること。EVでも、プラグインハイブリッド車でも使用可能なシステムとした。
二つ目は、標準化を目指すこと。例えば、待機電力を極力小さくして車両検知を短時間で行う新しい車両検知システムを開発している。
そして三つ目は、コイルと路面を一体化したプレキャストコイルの耐久性を検証することだ。

こうした走行中給電の実用化に向けた新しい試みには大いに期待したいところだ。
一方で、走行中給電や、EV等の電動車における非接触給電については、2010年代前半から中盤頃と比べると、近年は実用化に向けた話題が日本国内ではあまり聞かれなくなった印象がある。
その背景には何があるのか?

まず、EV等の電動車における非接触給電については、2000年代末から2010年代頭に
三菱「i-MiEV」と日産「リーフ」登場した後に、各種のベンチャー企業が独自に、または大手自動車メーカー各社と共同開発する形でプロトタイプを公開した。
当時、日米欧の各地でそうした非接触給電プロジェクトについて詳しく取材した。
標準化の議論についても、米自動車技術会(SAE)の関連シンポジウムに定常的に参加して、その動向を追った。

日産が2010年代半ば、インフィニティ向けのプロトタイプとして公開した非接触給電システム。筆者撮影。

 

だが、EV事態の普及がグローバルでなかなか進まない中、非接触給電の量産効果が見込めないという時代がしばらく続く。
その後、2010年代後半になり、グローバルでESG投資(環境、社会性、ガバナンスを重視する企業経営や投資に対する考え方)が拡大したことで、EV需要が一気に高まったものの、EVの搭載バッテリー量の大型化に伴い、充電については急速充電器の高出力化に重きが置かれるようになった。
直近では、2023年になってから、複数の日系自動車メーカーの電動化システム関係者に対して非接触充電の普及の可能性を聞いたところ「コストメリットと利便性において、従来の充電方式と併行して、またはとってかわって広く普及するには、まだかなり時間がかる」という回答だった。

 

非接触型と接触型での走行中給電

一方で、走行中充電については、非接触型と接触型の大きく2通りがある。
前者については、2010年代前半から、韓国の国立大学であるKAIST(韓国科学技術院)が精力的な研究開発を進めていた。実際、同大学の担当研究室を取材し、技術的な詳しい話を聞いた。
だが、現時点で韓国では、同技術の本格的な普及には至っていないのが実状だ。

2010年代前半当時の、KAIST(韓国科学技術院)での実証の様子。当時の現地取材で、筆者に対してKAISTが提供した画像。

 

また、接触型の走行中給電では、スウェーデン政府関連機関が高速道路の一部でパンタグラフ式装置を使った大型トラックで実証実験を行ったり、ホンダは日本国内の自動車関連施設でホンダ独自の方式で研究開発を進めているところだ。

こうした各方面での走行中給電システムに、今回の柏の葉での実証実験が加わることで、
走行中給電の社会受容性の検証と、規格標準化による実用化が促進されることを大いに期待したい。

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