インタビュー
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VWが打ち出す「LOVE BRAND」へ。トップ・オブ・デザインが語るポイント


TEXT:小川 フミオ
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フォルクスワーゲンのヘッド・オブ・デザインを務めるアンドレアス・ミント氏との語らいのなかで、小川フミオは「伝統の継承」にある素晴らしきデザインたちへのオマージュをきき出していく。

前回まで:
Vol.1    VW愛!デザイン責任者が語る「電気自動車時代に、わたしたちができること」
Vol.2 「ID.GTIコンセプト」のCピラーに注目。ヘッド・オブ・フォルクスワーゲン・デザインが物語る、これからのVWのデザイン

 

シロッコが、ブーメランを再解釈したように

ーー「ID.GTIコンセプト」は、ゴルフGTIの”伝統”を継承して、23年3月発表の「ID.2 all」と同様、基本的にフロントモーターで前輪駆動というレイアウトです。デザインも同様に、オリジナルにこだわりますか。

「Cピラーを太く見せることが大事だというのは、さきに説明したとおりです。しかもオリジナル・ゴルフを見ていると、とくに上面図でみるとわかりやすいかもしれませんが、後方にいくにしたがって、微妙なテーパーがついています。ちょっとしぼっているんです。そこもつよく意識しました」

 

ーーCピラーが太すぎると、ななめ後方視界がさえぎられてしまいます。従来のゴルフではそこがやや難点でした。

「なるほどなるほど、ID.GTIコンセプトでは、ゴルフ7に比べたら少し細くはしましたけれども、やはりデザインのエレメントとしては重要だと思っています。巌(いわお)のように頑強とか、堅牢というイメージをそのリアからフロントにかけて統一した形で持たせ、ステイブルというVWデザインのテーマにつながる要素ですので」

 

ーー伝統的なデザインといいつつ、でもたしかに、あたらしさを感じる気がします。

「側面のベルトラインを、前から後ろにかけてまっすぐに続くようにしたいと思いました。それは、審美的にも、ステーブルな印象という点でも重要だからです。そこで後席ドアのオープナーハンドルは、Cピラーのほうに移しています。開閉構造がベルトラインのデザインに与える影響を回避するためです」

ーーオリジナル・ゴルフは、イタリアのジョルジェット・ジュジャーロひきいるイタルデザインがデザインを手がけたとされていますね。

「Cピラーのデザイン処理は、すごいですよ。当時のジュジャーロのデザインにおいては、じつは、このトリートメントは典型的なんです。ゴルフ以外には、アルファロメオ・ジュリアや、私がもっとも好きなマセラティ・ブーメランでも同様です。平面的なシートメタルを使って、どうやって力強さを出すか。考えぬいた、あるいは直感的に知っていた、結果でしょう」

ーーブーメランとは意外ですが、デザインとしてはとてもいいですね。

「ブーメラン(1971年)は1970年代的な、パワフルなクルマのデザインです。ジュジャーロ氏は初代VWシロッコ(74年)もデザインしています。シロッコは、ブーメランのもうひとつの解釈といってもいいでしょう」

「LOVE BRAND」は、目がポイント

ーーシロッコもうだし、ゴルフも、初代は言うにおよばず、人間にとたえるなら目、つまりヘッドランプの形状が印象的です。それは、ID.GTIコンセプトでも同様でしょうか。

「もちろんです。VWのつくるクルマはつねに”笑っている”と思ってもらえるフロントマスクが、ひとつのテーマです。人間的な目を与えるのは、デザイン上で考えました。ただ同時にオールドスクール的な、古いものを踏襲はしていません。プログレッシブなデザイン、ちゃんと進歩していると感じてもらうことも重要なのです」

ーー最近のVWが打ち出している「LOVE BRAND」コンセプトに合致する考えですね。

「そこでフォルクスワーゲンのエンブレムを、真ん中に置いたうえで、それを光らせるデザインを採用しています。将来においては、たとえば、ヘッドランプの形状や数とか、変えるべきものがあれば変えていくつもりです。ヘッドランプの間にLEDのライトストリップを配する手法ですが、まっすぐな線だと、いろんなブランドがやっているので、みんな同じように見えちゃうので、差別化ができなければいけないと思っています」

 

Vol.4へ続く:「ID.GTIコンセプトは、その完璧な例」とVWアンドレアス・ミント氏が語るEVデザイン

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