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EV知能化時代、「イネーブラー」が本領発揮。カナダ「BlackBerry」が最新バージョン公開


TEXT:桃田 健史
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車載OS(オペレーティングシステム)が今、大きく変化している。ADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術、EV等の電動化、そしてAI(人工知能)による車載システムへの影響拡大などが大きな要因だ。そうした中、元祖イネーブラーのBlackBerryがさらなる進化を見せた。

車載OS、再定義の時代に突入か

BlackBerry(本社:カナダ、オンタリオ州ウォータールー)がEVなど次世代車に対応する新しいソフトウエアの仕組みを公開した。

ベースとなるのは、最新の車載OS(オペレーティングシステム)であるQNX OSに対応する、ソフトウエア開発プラットフォーム(SDP)8.0だ。BlackBerryは2010年にソフトウエア開発企業のQNXを買収している。

会見でBlackBerry幹部は「自動車産業界ではいま、EVを筆頭とした電動化が加速し、それに伴うクルマの知能化が重要視されている」として、車載OSを再定義する必要があるとの見解を示した。

まずは、車載OSに関するこれまでの経緯について簡単に振り返っておく。

OSといえば、身近なところではスマートフォンで、アップルのiOSやグーグル(親会社はアルファベット)のアンドロイドOSがよく知られている。

一方で、車載OSの重要性が増してきたのは、いわゆるコネクテッドカーと呼ばれる、クルマが外部と通信によってデータ連携する時代に入ってからだと言えるだろう。

自動車には小型のCPUによって、車載機能それぞれを制御してきた。最初は、エンジンやトランスミッションの制御系が主流だった。それが、予防安全のための先進運転支援システム(アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システム:ADAS)や車内エンターテインメントなどが拡充してきたことで、スマートフォンやパーソナルコンピュータのように車載OSの重要性が増してきたという流れがある。

大きな時代変化は、カープレイとアンドロイドオートの登場

車載OSについて大きな変化が起こったのは2013~2014年にかけてだ。

まず、アップルが開発者向け年次会議で、「iOS in the Car」という考え方を発表した。

のちに、アップル「カープレイ」として量産されることになる。

これは、スマートフォンと車載器を連携させる仕組み。その連携の方法について、アップルが自動車メーカー各社と協議して決める。

アップルに対抗するため、グーグル(当時)が提唱したのが「アンドロイド・オート」だ。世界最大級のITと家電の見本市である米CES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)で、アウディとGPU大手のエヌヴィディアが共同会見を開き、アンドロイド・オートの重要性を強調した。同日、ホンダと米ゼネラルモーターズ(GM)もアンドロイド・オートの採用を発表している。

グーグル(当時)はさらに一歩踏み込んで、「車載OSのアンドロイド化も推進する」という将来事業の方向性を示した。

一方で、トヨタはインテル等と連携した「オートモーティブ・グレード・リナックス(AGL)」を提唱してアップルやグーグルをけん制するという、業界図式がしばらく続いた。

そうした中で、BlackBerry/QNXは多様なOSとの共栄共存する巧みな事業展開で、車載OSのシェアを拡大していったのだ。

このような2010年代の車載OSは、インフォメーションとエンターテインメントを融合したインフォテインメントの領域についての議論が主体だった。

それが前述のように、ADASや自動運転技術の発展、さらにシェアリングなど自動車産業界に新たなる事業領域が広がる中で、車載OSは「クルマの知能化」を支える重要な位置づけへと変化していった。


「クルマの知能化」について「トヨタテクニカルワークショップ2023」での説明の様子。出典:トヨタ。

イネーブラーとしての優位性

そうした中で、BlackBerryは独自路線を貫き、他に類のないビジネス領域を自社開発してきたという印象がある。

筆者はこれまで、国内と海外の同社関係者と定常的に同社の事業やシステムの概要について情報交換をしてきた。その中で感じているのは、同社は常に短期間で変化する業界の動向に合わせて、OSという考え方を幅広く捉えて、例えばミドルウエアと呼ばれる領域で独自の発想を構築している。

同社のシステムをすでに、全世界で2億3500万台の自動車に組み込まれているほか、企業、政府機関、また様々な工業製品での使用されている。

こうした事業や企業、またはシステムを一般的に、「イネーブラー」と呼ばれる。共栄共存する媒介のような存在という意味合いだ。

次世代車については、今後さらにセーフティやセキュリティに対する信頼性が重要されていくことは間違いない。

今回の発表では、2020年に発表された、クラウド接続型AIプラットフォーム「BlackBerry IVY」の日本国内提供を開始したことを明らかにした。

BlackBerry IVYの特徴は、クルマに関するデータ処理の7割を車載型(エッジ)で行い、クラウドからはアルゴリズム等の最適化でバックアップする仕組み。これにより、通信料などのコスト削減を実現しつつ、システムの高性能化と両立させたという。

このように、BlackBerry/QNXは常にフレキシブルな対応を念頭に、新たな事業展開をグローバルで進めている。

「ソフトウエアファースト」という表現があるが、EV本格普及時代はまさに、ソフトウエアの時代になっていくことだろう。

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