誰でも不要……というわけではない
さて、急速充電不要論の対象となるのは、じつは平均的なドライバーである。
さまざまな調査を見ると、日本における乗用車ユーザーの年間走行距離は5000~7000kmあたりが平均的なボリュームゾーンとなっている。これは月間走行距離にすると420~585kmとなる。
たとえば、筆者が乗っているフィアット500eのスペックは、バッテリー総電力量42kWh、一充電走行距離は335kmとなっている。カタログスペックどおりの航続性能に達することはめったになく、おおよそ250kmくらいが満充電で走行できる距離の上限といえるが、それでも月に2度ほど充電しておけば500kmは走れる計算だ。
つまり、平均的なユーザーであれば、航続距離の短いコンパクトなEVでも2週間ごとに充電するくらいで、日常的な走行はカバーできる。同じことは、自宅の近くを走ることが多い軽EVにもいえるだろう。いずれにしても、毎日のように充電器につなぐというほど頻繁に充電する必要はない。もし、そうした運用をイメージしているのであれば認識をあらためる必要がある。
さらにいえば、日産リーフB7:702km、bZ4Xツーリング/トレイルシーカー:734km、レクサスRZ350e:733kmなど、一充電走行距離が700kmを超える国産EVも増えている。
カタログスペックでこれだけあるのだから、リアルワールドでの航続距離が多少は短くなるとしても、一度満充電にすれば平均的なドライバーの月間走行距離をカバーすることは、十分に期待できる。
昨今のEVが実現した航続性能と、平均的ドライバーの走行距離から考えると、月に1~2度普通充電をしておけば事足りるのに、わざわざ高コストな急速充電を利用するのは、経済合理性からも疑問だ。せっかくガソリンより安価な電気で走るEVに乗っているのであれば、ランニングコストにはこだわりたい。
そうはいっても、長期休暇を利用してドライブ旅行に出かけようとなったら急速充電を利用する必要はあるだろう。
ちなみに、筆者の試算としては、長距離走行をするのであれば、急速充電サービスをビジター利用するなり、その月だけ会員になるなりすればいいと考えている。ただし、個人的な事情をいえば、ロングツーリングには車中泊仕様の軽バンを愛用しているので、ドライブ旅行においてEVの出番はなかったりする。
「なんだ、急速充電不要論はエンジン車とEV2台もちの意見なのか」と思うかもしれないが、軽バンは日常的な長距離移動には向いていない。あくまで車中泊ドライブ旅行といった非日常に使っているにすぎない。
日常使いにおいてはコンパクトEVのフィアット500eがメインマシンであり、それを16カ月・6600kmほど乗ってきたなかで、一度も急速充電につながず、それでいて困ったことがない。今回の提言は、みんながみんな急速充電を前提にEVの運用を考えなくともいいと思うという話と理解してほしい。
























