トヨタの技術とソルテラがあったからこそ生まれた
その答えは「我々SUBARUから提案して始めたクルマです」
当然ソルテラというスタンダードなBEVがあったからこそ、スペースユーティリティーとパフォーマンスに特化した企画ができるわけで、ソルテラ無くしてトレイルシーカーは成らずなのだと、前出の中村氏は説明する。もっと言えば、SUBARUだけの技術力だけではBEVは完成せず、トヨタの技術力が合わさって初めて実現するものだと強調する。
だからこそ、ニーズを汲み取り、SUBARUらしい見た目で求める性能もSUBARUらしく実現した結果、むしろBEVらしく見えないフォルムに仕上がったのだろう。もはやデザインでBEVを強調する時代は終わり、次のフェーズに移行しているのかもしれない。
とはいえ、トレイルシーカーのデザインに見るべきところがないのかといえば、決してそんなことはない。例えば北米の需要を如実に反映したのがリヤテールデザインだ。樹脂成型されたバンパーの中央下部にカバーが目立つ形で設置されている。なんとこれ、カバーを外すとトレーラーを牽引するためのヒッチメンバーが隠れているのだという。これは日本車でなかなか見ることができない装備だ。
デザイン部の中村氏は「牽引力が必要になるし、そのためにはパワーも必要で、電費性能は悪くなります。BEVのトレンドとは真逆のことをやっていますが、これも(主に北米で)お客様のニーズがあるなら、むしろクルマをお客様に合わせましょう」ということで、BEVの性能には目をつぶってライフスタイル優先で装備を決めたのだという。
一方でSUBARUといえば「安全性」である。BEVであろうが初志貫徹、その姿勢は変わらない。「これを見てほしいんです」と中村氏に誘われたのはトレイルシーカーのフロント部分だ。
安全性を突き詰める姿勢に感服
上下2段に構えたフロントライトのうち、下段に位置する四角形のヘッドライトに注目してほしい。
「ここにウォッシャーノズルがあるんです。これまではバンパー上にノズルが据え付けていたのですが、トレイルシーカーはヘッドライトの上に埋め込みです」と言って見せてくれた。ステアリングの右下にウォッシャースイッチが設置されており、作動させると上からウォッシャー液を噴射してヘッドライトの汚れや雪を溶かしてくれるというものだ。
次に注目ポイントとして紹介されたのが、フロント中央に位置するSUBARUの「六連星」エンブレムだ。ヘッドライトと同調してエンブレムが光るのだが、注目すべきはそこではない。
このエンブレム内部にはレーダーが設置されていて走行をサポートする。しかし、先ほどのウォッシャーと同様に、着雪状態ではレーダーが正常に作動しない可能性がある。そこでSUBARUはなんとエンブレムに熱線を這わせたのだ。それが証拠に、エンブレムにはわかりづらいが縦方向に複数の黒い線が入っている。この熱線で雪を解かすとは、いやはや芸が細かい。
実はこの熱線入りエンブレム、ビッグマイナーチェンジ版のソルテラにも採用するとのこと。このあたりはBEVであっても一切安全に関して妥協しないのだ。エンジンという熱源が無くなっても、これなら安心だろう。
これ見よがしなBEVもステータスが感じられて良いものだが、BEV性能を突き詰めるあまりユーザーがメーカーに期待する何かを犠牲にしてはいけない。ましてや安全性に直結する部分なら。
これまで培ったアウトドア、アクティビティに最適なロングツアラーという唯一無二のポジションを、SUBARUはBEVであっても、このトレイルシーカーのように忠実に創り上げていくのだ。
TET編集部































