欧州では中国車が爆増してた
また、中国製BEVの人気車種上位を確認すると、8月単体におけるトップはBYDシーライオン7でした。1705台という登録台数は、同セグメントの競合であるトヨタbZ4Xの1623台、ヒョンデIONIQ5の1534台を凌駕しており、日産アリアにダブルスコア近い差をつけるような売れ行きです。さらに、XpengのG6も728台が登録されており、日産アリアに肉薄するという驚きの販売規模です。しかもZeekr 7Xも355台を登録しており、未発売の国で発売がスタートすることによる今後の販売増加にも期待できるでしょう。
そしてシーライオン7だけではなく、BYDが急速に販売台数を拡大させています。このグラフはBYDの欧州における車種別の販売台数を示したものです。最新のドルフィンサーフという新型BEVの投入とともに、Seal UというPHEVの販売台数が大幅に増加しています。欧州自動車販売全体のマーケットシェア率も、史上最高の1.4%に達しています。
さらに、2025年8月単体におけるBEV単体のブランド別販売ランキングでも、BYDは9位にランクイン。来年のどこかのタイミングで、欧州BEV販売ランキングトップ5に浮上する可能性も十分あり得るでしょう。またリープモーターやXpengなどの中国メーカーの台頭も目を見張るものがあるでしょう。
ちなみにBYDは最安モデルであるドルフィンサーフを、2025年末までに操業がスタートするハンガリー工場で現地生産します。よって、27%という関税率がゼロとなることから、さらにどれだけ値段を引き下げることができるのかにも注目です。また、9月中にシール6とシール6 Touringという新型PHEVを発売済みです。BEVだけではなく、追加関税を回避できるPHEVの販売動向にも注目でしょう。
ちなみに、欧州販売における主要自動車グループトップ10のなかで、パワートレイン別の販売シェアを確認してみると、とくにBEVシフトを着々と進めているのがBMWです。10台に3台がBEVというような販売構成であり、競合関係にあるメルセデスの18%と比較しても、明らかにBEVシフトでリードしています。また、最大手フォルクスワーゲングループもBEVシェア率は21%に到達しており、着々とBEVシフトを進めています。
他方で、トヨタはストロングハイブリッドのシェア率が73%に到達するものの、BEVシェア率は4%、PHEVのシェア率も10%と低水準に留まっています。CH-R+、アーバンクルーザーなどの新型BEVの投入によってどれほどBEVシェア率を高めることができるのかに注目です。
いずれにしても、欧州はすでにEVの踊り場を脱してEVシフトが再度加速中です。とくに年末以降にかけて、インスター、エルロック、EV3、ルノー5、日産マイクラEV、スズキe VITARA、トヨタ・アーバンクルーザー、BYDドルフィンサーフなどというコンパクトEVを筆頭に、さらにメルセデス・ベンツCLA Electric、GLC Electric、BMW iX3ノイエクラッセなどの新型EVによって、EVシフトの遅れをどこまで取り戻すことができるのかに注目です。
その上で、BYDを筆頭として、中国勢の欧州現地工場が稼働することで、追加関税のバリアを突破してどれほど競争力を高めてくるのか。年末以降の中国勢の動向にも要注目です。
高橋 優































