シャオミとポルシェがニュルでガチンコバトル
中国の家電ブランド、Xaomiが手掛けたSU7 Ultraは、なんとニュルブルクリンク最速EVという称号をポルシェから奪い取っている。EVは内燃機関モデルを製作するよりも手軽に参入できることから、ニュル最速EVの座をかけた戦いは今後激戦となりそうだ。
大の大人が正面切ってムキになれるのがレースというもの。ラップタイムを競い合うのに、建前やしがらみは一切不要。これをリアルに体現しているのが、近年のシャオミSU7対ポルシェ・タイカン・ターボGTのガチンコ対決ではないでしょうか。
つい先ごろ、シャオミSU7はスペシャルバージョン「トラックパッケージ」と禁じ手かのような「ニュルブルクリンク・リミテッドエディション」の2タイプをラインアップ。両車のバトルはいよいよ佳境へと突入したようです。
ご存じの方も多いと思いますが、そもそもシャオミは中国の携帯電話メーカー。そこが突如EVビジネスに参入したのが2021年のことで、SU7は彼らにとって最初のモデルでした。高級4ドアセダンの市場に投入され、FRモデル(299馬力)・全輪駆動(673馬力)あたりが一般的なモデルですが、「世界一のEVメーカーになる!」というCEOが掲げたモットーのとおり、シャオミはとんでもないEVを発売したのです。
SU7 ウルトラと呼ばれるトップエンドモデルは、578馬力を発揮するモーターを2基、392馬力のモーターを1基搭載し、合計出力1548馬力というハイパワー。ポルシェがニュルブルクリンクのラップレコード向けにチューンしたタイカン・ターボGT「バイザッハ・パッケージ」が1108馬力とされているので、いかにシャオミがムキになっているかがよくわかる数字かと(笑)。
もちろん、プロモーションの一環としてSU7 ウルトラはニュルブルクリンクにチャレンジ。プロトタイプとしながら、6分22秒091と驚異的な数字を叩き出しています。
ちなみに、市販車の最速モデルとしてはメルセデスAMGが6分35秒183、シャオミSU7プロトタイプが挑戦したオープンクラスは、ポルシェ919ハイブリッドが5分19秒546という記録になります。
携帯電話屋がポルシェを完膚なきまで叩きのめした
そして、プロトタイプによる挑戦から1年を待たずして、SU7は再びニュルへともちこまれました。「トラックパッケージ」と呼ばれるサーキット仕様車で、ビルシュタインの車高調整ダンパーや、ピレリのセミスリックタイヤ(タイカン・ターボGTと同じくトロフェオRS)などを装備した市販モデル。要するに、ポルシェ・タイカン・ターボGTと同じクラスへとエントリーしてきたというわけ。
で、SU7 ウルトラ・トラックパッケージは7分4秒957を記録し、約3秒の差をつけてタイカンを抜き去って見せたのです。カタログで0-100km/h加速1.98秒、最高速350km/hを謡うだけあって、なかなかのパフォーマンスと認めざるを得ないでしょう。が、シャオミはトラックパッケージのさらに上を行く限定モデル、その名も「ニュルブルクリンク・リミテッドエディション」も用意しています。
ハードの内容はウルトラとほぼ同じながら、内外装をフルカーボン仕上げにしたり、アンダーパネルを特別製なものにするなど、あたかもGT選手権にでも出走しそうなマシン。せっかくだったら、これでタイカンをやっつけたらよかったのに、と思ったものの、こちらは総生産100台までの限定モデル。市販EVクラスへのエントリーができなかった様子です。
SU7ウルトラ対タイカン・ターボGTのタイム差は、やはり最大出力が大きな影響を及ぼしたのではないでしょうか。また、SU7のエアロダイナミクスはCd値0.198と市販車のなかでも屈指の高性能で、タイカンよりも開発年度は新しいもの。最初からアドバンテージを握っていた、といっても差し支えありません。
が、ポルシェとしては「ポッと出てきた携帯電話メーカーのクルマだと!?」と、はらわたが煮えくり返っていることでしょう。どうやら、ポルシェはバッテリーの冷却に苦労をしていると思われ、ここぞというときにプッシュするパルスインバーターによる追加パワーの増大と持続時間を改善しているという情報もあります(現状は最大10秒間、163馬力が追加されます)。
もっとも、ここはシャオミに軍配を上げるべきかと。バイザッハの連中がいうとおり「ポッと出の携帯電話屋」がここまですごいEVを作り上げたことは、手放しで褒められる快挙に違いありません。たとえプログラムに不具合があって事故が起きようと、貫通していないエアダクトパーツを売ろうとも、ニュルブルクリンク最速はすなわち神! そう信じている方は決して少なくないのですから。
石橋 寛













































