4ドア5人乗りの「ルーチェ」が示す、EV時代のフェラーリ像
「ついにフェラーリもEVの時代か……」。そんな感慨を抱いたクルマ好き、そしてEVオーナーの方も多いのではないでしょうか。イタリアのマラネロが誇る跳ね馬、フェラーリからブランド初となるフル電動モデル(BEV)「Luce(ルーチェ)」が発表され、先日25日には日本でもお披露目されました。イタリア語で「光」を意味するこのクルマは、単にエンジンをモーターに載せ替えただけのEVではありません。超高級スポーツカーの世界にどんな新しい光を当ててくれるのか、その魅力に迫ります。
エンジン音の代わりに「生きた機械音」を。フェラーリの新しい音の解釈
EVに乗り換えたとき、一番のギャップを感じるのは「音」ですよね。無音の静けさはEVの大きなメリットですが、スポーツカーにおいて音はドライバーの感情を揺さぶる大切な要素です。フェラーリがルーチェで最もこだわったのは、まさにこの「音」でした。多くのスポーツEVがスピーカーから人工的なサウンドを流す中、ルーチェはモーターやギアが実際に発する振動や機械音を高精度のセンサーで拾い上げ、それをリアルタイムで処理して車内外に響かせるという手法をとりました。いわば、エレキギターとアンプのような関係です。録音された作られた音ではなく、今まさにクルマが発している「生きた機械の鼓動」を感じられる。V12エンジンの咆哮とは違いますが、EVならではの新しいスポーツサウンドの形を提示してくれました。
4つのモーターがもたらす、自然な一体感と5人乗りの快適性
フェラーリ初の4ドア、そして5人乗りというパッケージングにも驚かされますが、スペックもしっかりとスーパーカーの領域にあります。122kWhの大容量バッテリーを床下に敷き詰め、4つのタイヤそれぞれにモーターを配置。システム最高出力は1050馬力(772kW)に達し、0-100km/h加速はわずか2.5秒という鋭い瞬発力を備えています。しかし、ルーチェが目指したのはサーキットでの最速タイムだけではありません。各タイヤの駆動力を独立してコントロールできる4モーターの強みを活かし、クルマ全体がひとつの生き物のようにドライバーの意思とシンクロする「自然なドライビングフィール」にこだわって開発されています。一充電での航続距離は約530kmとされ、最大350kWの超急速充電にも対応しているため、大人の週末のロングドライブも十分にこなせる実用性が確保されています。
元Appleデザイナーが手掛けた、アナログとデジタルが交差する心地よい空間
もうひとつ見逃せないのが、デザインへのアプローチです。今回のルーチェは、元Appleのチーフデザイナーとして知られるジョニー・アイブ氏が率いるデザイン会社「LoveFrom」と共同でスタイリングされました。最近のEVは巨大なタッチパネルにすべての操作を集約しがちですが、ルーチェのインテリアにはトグルスイッチやダイヤルといった物理スイッチがしっかりと残されています。デジタルの便利さを取り入れながらも、手で触れて操作する「機械を操る楽しさ」を忘れていません。さらに、ガラス製のキーには電子ペーパー技術(E-Inkディスプレイ)が内蔵されており、クルマに差し込むとフェラーリイエローがフワッと広がる演出まで用意されています。日本での価格は7623万円と公表され、納車時期はまだ未定ですが、「電動化してもフェラーリはフェラーリであり続ける」という彼らの丁寧で情熱的なクルマづくりは、これからのEV業界全体をもっと面白くしてくれそうです。
身近で頼もしい軽EVから、日常を彩るコンパクトカーやSUV、そして情熱溢れるスーパースポーツまで。自分のライフスタイルや好みに合わせて選べる「EVの多様性」が広がった今、これからのEVライフはますます楽しく、豊かなものになっていきそうです。いつか日本の道路で、この新しい跳ね馬の「鼓動」を目にする日を楽しみに待ちたいですね。


























