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成長の中心はもはや先進国ではなく新興国へ
<中国メーカーの圧倒的な存在感>
新興国市場で販売されるEVの大半は、中国メーカーが製造・輸入したものである。前述のICCTの調査によると、BYDはブラジルで66%、コロンビアで45%、タイで41%、インドネシアで35%という圧倒的なマーケットシェアを獲得している。
タイ市場では、BYDに加えてSAIC、GAC、長安汽車、長城汽車といった中国メーカーが合計で70%以上のシェアを占め、インドネシアでも中国メーカー全体で80%以上を掌握している。これらの中国メーカーは、2万米ドル程度からという手ごろな価格設定で、これまでEVが高嶺の花だった新興国の消費者層にアプローチしている。
一方、ベトナムでは国産メーカーのビンファストがEV市場の約90%以上を占めており、同社は東南アジアや米国への輸出も開始している。ビンファストのEVも同様に価格は2万〜3万ドル台が主流となっている。トルコでも国産EVであるトゥオッグ(TOGG)がシェア15%を占め、現地で存在感を高めている。価格は3万米ドル超と、欧州や新興国の中国EVと比較するとやや高価格帯だが、国内生産による税優遇措置や政府の支援もあり、トルコ国内では主流のEVブランドとして普及が進んでいる。
インドのFADA(連邦自動車販売協会)の調査によると、インド市場ではタタ・モーターズが国内最大のEVメーカーとして君臨し、2024年実績では月間約5000〜7000台の販売を維持している。それに続く第2位をめぐっては、MGモーター(MG Motor)とマヒンドラ(Mahindra)が激しく競っており、両者の差はわずかだ。そのほか、韓国のKiaやBYDが続くが、上位3社に比べると台数は大きく下まわっている。
<地域ごとの特色と今後の展望>
新興国でのEV普及をあと押ししているのは、各国政府による積極的な政策支援である。ベトナムはEV購入時の登録料を免除し、国内生産EVに対する特別消費税の優遇措置を2027年まで延長。タイはEV購入補助金拠出と輸入関税の引き下げ、消費税優遇措置を実施している。インドネシアは2025年にEV向けの付加価値税を12%から2%に引き下げ、さらに贅沢税を撤廃した。コロンビアでもEV購入時の輸入関税・購入税の減免や、ボゴタなどの都市では交通規制の適用除外措置を導入している。
BYDを筆頭とする中国メーカーは、単なる輸出にとどまらず、ブラジルやメキシコ、インドネシアなどで現地生産工場の建設を計画している。ただし、こうした動きに対しては、技術移転や国内産業育成が伴わなければ長期的な利益にはつながらないという指摘もある。新興国市場は今後も高い成長が見込まれ、2030年に向けてグローバルなEV市場の重要な牽引役となるだろう。




















































