2023年9月
三菱ふそう・eキャンター(photo=三菱ふそうトラック・バス)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
900台が実戦配備……ヤマト運輸、「三菱ふそう・eキャンター」を導入し電動化も一歩前へ[2023.09.20]

三菱ふそう側も前例のない大規模導入で業界への影響は必至 その数字が物語るのは「eキャンター」の完成度の高さか 【THE 視点】三菱ふそうトラック・バス(MFTBC)は、EVトラック「eキャンター」をヤマト運輸に900台納入すると発表した。新型の「eキャンター」としては初導入となる。 ヤマト運輸は、2017年に従来型の「eキャンター」を25台を導入し、宅急便などの集配業務で活用してきた。それらの実績を踏まえ、今年3月9日に発売した第3世代目の新型「eキャンター」の大規模導入を決定した[関連記事はこちら<click>]。9月より全国に順次導入していく。 導入車両は、ドライ・冷蔵・冷凍機能の3室を備えた「標準キャブ仕様」で、電池容量は同社の仕様の中で最小の41kWhとなる。 新型で新たに追加した「標準キャブ仕様」は、キャブ幅が最も狭く小回りが利くため、街中での配送に適している。最高出力110kW(150ps)・最大トルク430Nm(43.9kgm)で、最高速度89km/h、急速充電の使用で最短40分で90%まで回復でき、普通充電(最高出力6kW)は8時間で満充電にできる。航続距離は116km(国土交通省審査値)。 またMFTBCは、新型「eキャンター」の専用リースプラン「FUSOグリーンリース」の提供も開始した。車両本体の費用/コネクテッドサービス「トラックコネクト」/フルカバーメンテナンスサービス/充電器と充電器設置費用/任意保険料がプランに含まれる。 フルカバーメンテナンスサービスでは、車両のメンテナンスに加え、ロードサービス費用/電欠時の代替輸送費用の補償サービス/充電管理システムも利用できる。今回のヤマトの導入はこのプランを利用しての導入となる。 「eキャンター」は、2017年の発売以降世界各国で450台程度販売されたと伝えられている。今回は、その数を大きく上回る台数がヤマト運輸に納入されることになる。 ヤマト運輸は、これまでにもドイツ・ストリートスクーター社のEVバンを500台導入したり、「日野・デュトロZ EV」を導入してきた経緯がある。 しかし今回の900台という数字は、実験という意味合いはなく本格的な実践配備と理解できる数字である。「eキャンター」自体の使いやすさや信頼性、高い完成度がなければ、このような台数を決断できないだろう。筆者はまだ「eキャンター」に乗ったことはないが、相当のクオリティを持つEVトラックとなっていると想像できる。 今回のヤマト運輸の決断は、同業他社のEVトラック導入に拍車をかけると予想している。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★トヨタ、EVの開発現場を公開 ……「ものづくりワークショップ」でEV関連の製造設備を持つ工場を公開した。貞宝工場に製造設備をもち、2028年までの実用化を目指している全固体電池は、量産工法の最終段階だという。元町工場では「BEVハーフ構想」の具体例を示した。車体をフロント/センター/リヤに分けて組みつけることで、生産設備もより単純化できるという。明知工場のギガキャスト設備を公開した。 ★★フィアット、SUVの新型EV「600e」を本国で発売 ……Bセグメントに分類される小型SUV。航続距離はWLTP値で400km以上、都市サイクルでは600km以上となる。従来よりも静粛性を50%高めた新型モーターを採用。「スポーツモード」を選択可能なパワーモード選択機能も備えている。 ★★ブリヂストン、再生可能タイヤをソーラーカーレースに投入 ……再生資源・再生可能資源比率63%の「ENLITEN」技術を採用したタイヤを、ソーラーカーレース「2023ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ」に投入する。モータースポーツへの投入は初めてだという。 ★ノースボルト、トラックメーカーのスカニア向けバッテリー生産工場を開設 ……両社が共同開発した大型商用EV向けの高性能バッテリー製造工場をスウェーデン・セーダーテリエに建てた。車両製造ラインに隣接した設備で、EVトラックの生産効率を高めることができる。毎秒1つのバッテリーセルを製造できるという。 ★アウディ、ダカールラリー用のEVでヨーロッパを巡業 ……ダカールラリーに出場予定のバギー型EV「RS Q e-tron」のPRで、スペイン・マドリード/フランス・パリ/ドイツ・ストックホルムを巡業した。市街地を実際に走行しドリフトなどのデモを行なった。 ★ヒョンデ、Jネットレンタカーの店舗で納車が可能に ……同店舗でヒョンデのEVの試乗と納車が可能になる。サービス開始は9月22日から。対象店舗は「越谷レイクタウン店」「所沢店」「沼津店」「浜松和田店」「イオンタウン四日市泊店」の計5店舗。 ★エネチェンジ、スーパーの平和堂グループにEV用充電器を設置 ……平和堂の40店舗に加えてグループの飲食店2店舗に6kWタイプの普通充電器を導入した。一般的な充電器よりも倍速で充電が可能。 ★ボードリー、北海道苫小牧市で自動運転バスを実証実験 ……「苫小牧駅」〜「道の駅ぷらっとみなと市場」間を実証運行する。期間は9月20日(水)〜10月15日(日)。1日5便ずつの運行となり、無料で利用が可能。 ★メルセデス・ベンツ、CO2を削減したリサイクル鋼をEVモデルに使用 ……米アラバマ州のタスカルーサ工場で年間5万トン以上のCO2削減鋼を米SDI社から調達する。同工場では「EQS SUV」と「EQE SUV」を製造。リサイクル素材を70%含有したSDIの鋼を既に使用しており、早けれは今年9月からCO2削減リサイクル鋼を使用するという。 ★MKタクシーの専用充電ステーションにEV用超急速充電器を設置 ……パワーエックスは、エムケイ<京都市>のEVタクシー・ハイヤー専用充電ステーションに、蓄電池型のEV用超急速充電器「ハイパーチャージャー」を導入するという。最高出力150kWの充電器で、車両の稼働ロスを減らすことが期待できる。 ★ダイムラー・トラック、「三菱ふそう・eキャンター」の販売トレーニングを欧州で実施 ……ヨーロッパ全土のディーラーでEVトラック「eキャンター」の販売トレーニングを行なう。その中には運転訓練も含まれている。 ★東洋テクニカ、バッテリーの検査評価機器を発売 ……中国のリチウムイオンバッテリー評価装置メーカーIEST社と代理店契約を結び、評価機器の輸入・販売を行なう。製造過程での様々な測定項目を一元的に評価できる機器となる。 ★米ジョビー・アビエイションの「空飛ぶクルマ」に日の丸技術 ……航空産業のタマディックが、試作機生産および量産検証に用いられる最終組み立て用治具などの設計製作を2021年6月に受注。現在は量産試作機の生産に使用されている。 デイリーEVヘッドライン[2023.09.20]

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BYDドルフィンのフロントビュー
TEXT:小川フミオ
新型BYD「ドルフィン」の商品力に見る凄み。中国発の最新コンパクトハッチに国内試乗

BYDのエントリーモデル、ドルフィンがいよいよ日本で発売される。フォルクスワーゲン ゴルフに近いサイズ感のコンパクトEVだが、充実した装備や乗り心地、空間の巧みな使い方には高い商品力が感じられる。果たして、ドルフィンはEVのコンパクトハッチ界を掻き回すキープレイヤーとなれるのか。自動車ジャーナリスト・小川フミオが解説する。 兄貴分に負けないドライバビリティ BYDは、2022年にワールドワイドで約180万台のBEVを販売。2021年は60万4000台だったのに対して、ものすごい、とつけたくなる飛躍的な数字だ。 実際、2023年9月のドイツ・ミュンヘンの「IAAモビリティ」自動車ショーでも、大きなブース面積を専有。さらに、アウトバーンのチャージャーの前にいると、BYDモデルでやってくるドイツ人ドライバーたちにも出会った。 欧州人は実務的なひとも多く、バリューフォーマネーだから選んでいるのか。と、知らなかったら、私は思っていたかもしれない。 実際は、ドルフィンに乗ると、たいへんよく出来ているのに感心するほどだ。 ATTO 3も、ドライバビリティが高いクルマで、動力性能と操縦性がともにいい感じのレベルに達していた印象だが、ひとつ下のドルフィンも負けていないと思う。 BEVの多くにみられるように、重量物を床下に搭載しているので、重心髙が低く、ハンドルを動かしたときの車体の追従性はよく、カーブを曲がるときも安定している。 310Nmのトルクがアクセルペダルと踏み込むとすぐに出るため、加速の“つき”がよくって、さっと曲がるし、さっと加速するので、ドライブしている自分との一体感がある。 といっても、足まわりの設定は硬いいっぽうでない。ふわりふわりといえばいいのか、路面への追従性は高いうえに、凹凸は丁寧に吸収。高速道路でもしなやかに感じられて、気分がよい。 ゴルフクラスのハッチバックで、比較的コンパクトだけれど、乗り心地のよさは印象的だ。車重は1680kgと軽くないが、重さを活かして、重厚な雰囲気すらあるのだ。設定がうまい。 加速はがんっと車両が飛び出していくような暴力性は抑えられていて、最新のBEVらしく、うまくしつけてある。つまり、ICE(エンジン車)から乗り換えても、違和感はおそらくまったくないだろう。 ADAS類は積極的に全車へ搭載 装備の豊かさも、ドルフィンの大きな魅力になるだろう。安全および運転支援システムの充実ぶりにもぬかりはない。 アダプティブクルーズコントロール、レーンキープ、レーンサポート、車線変更アシスト、ブレーキの効き具合を設定できるコンフォートブレーキ、前後のクロストラフィックアラートおよびブレーキ、交通標識認識システムなどが標準装備。 加えて、感心したのは、ミリ波レーダーを使った幼児置き去り検知システム(ライトの点滅とホーンによる警報)や、ドアを開けるとき自転車や歩行者を検知して警告するドアオープン警報も標準で搭載されること。 ドアオープン警報は、車内から外に出るときばかりか、車外から乗りこもうとドアを開けるときも作動する。事故自動緊急通報装置も装備される。 ロングレンジモデルと標準モデルで、安全装備に差をつけていないのも褒めるべきところ。 ちなみに、フロントクロストラフィックアラートとクロストラフィックブレーキ、ドライバー注意喚起機能、幼児置き去り検知システム、ペダル踏み間違い時加速抑制装置は、ATTO 3には搭載されていない。 日常的に使っていて、かなり頼れちゃいそうだ。むしろ頼りすぎた結果、同等の装備レベルにないクルマだと乗る気がおきなくなってしまうかもしれない。そこまで感じさせる。 価格は、2023年9月20日に明らかにされる。かなり競争力のある価格設定になると聞く。 BYD DOLPHIN Long Range 全長:4,290mm 全幅:1,770mm 全高:1,550mm ホイールベース:2,700mm 車両重量:1,680kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:138Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:476km(WLTCモード) 最高出力:150kW(204ps)/5,000-9,000rpm 最大トルク:310Nm(31.6kgm)/0-4,433rpm バッテリー総電力量:58.56kWh モーター数:前1基 トランスミッション:1速固定式 駆動方式:FWD フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット リアサスペンション:マルチリンク フロントブレーキ:ベンチレーテッド・ディスク リアブレーキ:ソリッド・ディスク タイヤサイズ:前後 205/55R16 最小回転半径:5.2 荷室容量:345-1,310

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TEXT:小川 フミオ
VWの電気自動車「ID.」シリーズの高性能モデルも登場!? ID.オーナーミーティング取材リポート

IAAでの取材を終えた小川フミオ氏は、スイスで行われるID.シリーズのオーナーたちの集まりに向かった。そこではフォルクスワーゲンが開発したコンセプトモデルも公開されていた。 3回目のID. MEETING フォルクスワーゲンのBEV(バッテリー電気自動車)「ID.」シリーズのオーナーが、スイスのイタリア語圏ロカルノでミーティングを開いた。楽しそうな、その様子を見てきたリポートをお送りします。 同時にもうひとつ、このときの話題はID.シリーズのスペシャルモデルのお披露目。フォルクスワーゲン本社のエンジニア有志による「ID.X(アイディーエックス)パフォーマンス」モデルが公開された。 通常、ブランドがファンをつなぎとめるのに、もっともいい方法のひとつが、オーナーズミーティングともいわれる。 世界的に有名なものは、ゴルフGTIオーナーによるオーストリアのベルターゼー(Wolthersee)という湖の湖畔で行われてきた。1982年に始まり、メーカーまで巻き込んで毎年20万人を超えるひとが集まる大イベントに成長した。 ベルターゼーのイベントは、あいにく、あまりにひとが集まりすぎて、要するにオーバーツーリズム状態となり、現地から開催を見合わせてほしいという要望が出されるまでに。フォルクスワーゲンでは、24年から独ウォルフスブルクの本社での開催を発表している。 2023年9月に第3回めを迎える「ID.TREFFEN」(英語だとID. MEETING)。スイス・チューリッヒ出身のダニエル・オット氏(48歳)氏の呼びかけで、マジョーレ湖畔の街ロカルノで開催された。 オット氏は、ゴルフGTIやゴルフRなど歴代のスポーツゴルフに乗ってきて、いまは「ID.3」の車高を落としたモデルに乗る。妻は「ID.5」に乗っているそう。 「SNSで呼びかけて、100台の参加申込みがありました。じっさいは、120台ぐらいの参加になりそうです」 ウェブデザイナーを職業とするオット氏は、取材に対して、そう説明してくれた。 このミーティングに集まったのは、ID.ドライバーズクラブのメンバーが中心。スイスからのゲストが多いが、ドイツやオランダのナンバープレートもちらほら。  

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BYDドルフィンのフロントビュー
TEXT:小川フミオ
BYD「ドルフィン」で感心した3つのポイントとは。中国発の最新コンパクトハッチに国内試乗

日本への本格進出をスタートしたBYDが、「ATTO 3」に続いて導入するのがコンパクトEVの「ドルフィン」。エントリーモデルとなるハッチバックモデルには、電気自動車ならではの魅力と、BYDらしい独創性が見られるようだ。プロトタイプに国内試乗する機会を得た自動車ジャーナリスト・小川フミオが、感心させられたポイントを解説する。前回記事はこちら。価格に関する記事はこちら。 期待以上に広い室内空間 BYDが2023年9月20日に日本へ導入するドルフィン。車名はイルカだけれど、クロスオーバーのボディスタイルに、あまり関連はなさそう。 でも、インテリアでは“海”のモチーフが何ヵ所も、とBYD。内側のドアオープナーハンドルはイルカのヒレとか、ダッシュボード両端のエアアウトレットは“青海波”のような形状。 外観は開口部こそないけれど、ブラックアウトしたパネルがヘッドランプのあいだに設けられていることもあり、知らなければBEVとはわからないかも。 車体側面のリアフェンダーにかけての三角を橫にしたようなふくらみが独特で、これをおぼえていると、街中で見かけたときすぐ、ドルフィンだと気づくだろう。 Aピラーの付け根が前のほうに出ているのは、エンジンなどのマスをもたないと、ファイアウォールを前へ出せるため。その結果の、BEVならではのデザインだ。フォルクスワーゲンのID.シリーズとも通じる。 室内スペースは期待以上に広い。2,700mmのロングホイールベースで、しかも床面はフラット。後席にいても、かなりくつろげる。コンパクトな外寸ながら、4人で楽に使える利便性をもつ。 内装品質が高く、装備も充実 じつは、運転席で、もうひとつ印象深いことがある。作りの品質だ。合成樹脂の部品の品質感が高い。さらに、内装色に3つのバリエーションがあるのだが、小さなパーツまでカラーキー(色合わせ)されているのだ。 なかでも「コーラルピンク」というキラキラした薄いピンク色の車体色をもつ車両は、ピンク基調の内装色。シートは紫がかったピンクと、オフホワイトの組合せ。スイッチ類は少し黄味がかったシルバーだ。ブラックの内装だとここはブラック。 この徹底ぶりには感心。内装は、コストを反映する部分で、日本車だと特にこのところ、ちょっと手を抜いてるかなーと思うケースもあった。それがこのコンパクトなハッチバックで、というのに私は感心したのだ。 しかもというべきか、よくわからないけれど、シート材質は「ビーガンレザー」。ビーガン内装とは最近欧米で使われる用語で、意味するところは、本当の動物の皮革の不使用。 疑似レザーのほうがコストが高い場合もあって、メーカーによってはビーガン内装だと、プラスアルファのオプション料金を支払う必要がある。ちゃんとトレンドも押さえているのだ。 前席左右は電動調節式。シートヒーターもついている。エアコンのフィルターはPM2.5対応と、まるでたとえばボルボ車の解説を書いているような気になる装備の充実ぶりではないか。 ダッシュボード中央の12.8インチの液晶モニターは、ふだんは橫でも、スイッチで90度回転させればiPadのように縦で使える。ATTO 3でも導入されていた装備だ。小細工だということも出来るけれど、ユーザーはこういうところもなんとなく嬉しいだろう。 もし自分がドルフィンを買うときはどんな仕様にするだろう……と考えると、たしかにブラックとかブルーは無難だけれど、ピンクっていっそのこといいかもしれない、と思ったりする。 Vol. 3へ続く BYD DOLPHIN Long Range 全長:4,290mm 全幅:1,770mm 全高:1,550mm ホイールベース:2,700mm 車両重量:1,680kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:138Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:476km(WLTCモード) 最高出力:150kW(204ps)/5,000-9,000rpm 最大トルク:310Nm(31.6kgm)/0-4,433rpm バッテリー総電力量:58.56kWh モーター数:前1基 トランスミッション:1速固定式 駆動方式:FWD フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット リアサスペンション:マルチリンク フロントブレーキ:ベンチレーテッド・ディスク リアブレーキ:ソリッドディスク タイヤサイズ:前後 205/55R16 最小回転半径:5.2m 荷室容量:345-1,310L

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BYDドルフィンのフロントビュー
TEXT:小川フミオ
BYD「ドルフィン」は日本製EVの脅威となるか。中国発の最新コンパクトハッチに国内試乗

コンパクトSUV「ATTO 3」を携えて、いよいよ本年日本での本格展開をスタートしたBYD。彼らが送り込む第2のモデルが、コンパクトハッチバックタイプの「ドルフィン」だ。2023年9月20日より販売を開始する小さな“刺客”は、いかなる実力を備えているのか。自動車ジャーナリスト・小川フミオがいち早くプロトタイプに試乗した。価格に関する記事はこちら。 フォルクスワーゲン ゴルフに近いサイズ感 BYDが「ドルフィン」なるBEVハッチバックを、2023年9月20日から日本で発売する。このリポートはひと足先に「プロトタイプ」(発売前のモデルをそう呼ぶこともある)に試乗してのものだ。 ひとことで乗った感想を書くと、驚いた。驚いただけでは、やっぱり、短すぎる。驚いた理由は、期待以上によく出来ていたからだ。快適で、操縦性が高く、利便性も高そうだ。 ドルフィンは、全長4290mm、全幅1770mm、全高1550mm。近い数値のクルマを探すと、フォルクスワーゲン・ゴルフが全長4295mm、全幅1790mm、全高1475mmだ。 ゴルフと比較すると明確にわかるのは、ドルフィンは全高が高く、ハッチバックというよりSUV的な、いわゆるクロスオーバー車型であることだ。 電気モーターをフロントに搭載した前輪駆動方式で、ドライブトレインがコンパクトにできるBEVゆえパッケージングに秀でており、ホイールベースはゴルフより80mm長く2700mmもある。 BYD車は、駆動モーター、トランスミッション、DC-DCコンバーター、モーターコントロールユニット、車両コントロールユニット、オンボードチャージャー、バッテリーマネージメントシステム、高圧配電モジュールをまとめた「8-in-1電動パワートレインシステム」を採用。そのメリットとして、メーカーでは「重量は15%、体積は20%低減し、空間効率の最大化を実現」したとしている。 「e-プラットフォーム3.0」と呼ばれるシャシーに、BYDが独自開発したブレードバッテリーという薄いセルを集めたバッテリーパックを敷き詰めるようにして搭載。 ブレードバッテリーは、熱安定性の高いリン酸鉄リチウムを使っていて、「熱安定性の問題を解決している」と、BYD。 ちなみに、2023年1月に日本導入された初のBYDモデルである「ATTO 3」は、全長が4455mm、全高が1615mm、ホイールベースが2720mmと、ドルフィンより大きい。 ドルフィンのメリットは、数値からわかるとおり、よりパッケージングの効率がいいことと、立体式駐車場にも入れられるところにある。シャークアンテナの形状を変更して、1550mmに全高を抑えているそうだ。

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リマック・ネヴェーラ(photo=福田 雅敏)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
美しき豪速EV「リマック・ネヴェーラ」が日本発売……0-100km/h加速1.8秒[2023.09.19]

最高出力1,940ps・0-100km/h加速1.8秒・価格約3億1500万円と脅威の数字の羅列 日本初公開となった個体は鬼神的数値と相反する美しい佇まい 【THE 視点】ハイパーカーの輸入・販売を手掛けるビンゴは9月13日、クロアチアのEVメーカー「リマック オートモビリ」の市販モデル「ネヴェーラ」の日本導入を発表した。実車は15日まで「ARTA MECHANICS & INSPIRATIONS」<東京都江東区新木場>にて展示した。 このデイリーEVヘッドラインでも伝えてきたハイパーEVが、筆者の想像より早く日本に上陸した[詳細はこちら<click>]。注目の高性能スポーツEVだけに、いち早く現車を確認すべく会場に向かった。 「ネヴェーラ」のスペックは驚異的である。4つのホイールにそれぞれモーターを搭載した4モーターのAWDで、最高出力1,427kW(1,940ps)・最大トルク2,360Nm(240.7kgm)を発生し、最高速は412km/h、0-100km/h加速は1.81秒を誇る。ちなみに展示車のナンバープレートは、そのパワーにちなんだ「1400KW」が刻印されていた。 最大容量120kWhバッテリーを搭載し、航続距離は490km(WLTP)。ボディサイズは4,750×1,986×1,208mmでホイールベースは2,745mm、車両重量は2,300kg。生産台数は150台で、価格は200万ユーロ(約3億1,500万円)からとなっている。日本でのデリバリーは2024年第三四半期以降になるとのこと。 日本初上陸となったマシンは、地中海に面したクロアチアらしさを感じる個体だった。0-100km/h加速はマッスルカーも裸足で逃げ出すような鬼神的な数字を叩き出しながらも、ボディと内装はその数値と相反するように美しい。 筆者の勝手な印象だが、クロアチアの「アドリア海の真珠」と称される港町「ドゥブロヴニク」を彷彿とさせるカラーを纏っている。外装はアドリアブルー(勝手に令名)をまとい、内装はレンガ作りの建物を彷彿とさせるベージュの内装。“クロアチアの誇り”と言わんばかりの佇まいである。 コクピットに座ることができたが、車内にある3つのディスプレイは、ボディカラーと同じアドリアブルーに発色され、とてもエレガントにも感じた。 この個体は、関東にも台風が上陸した9月8日に日本に空輸され、それからデパートでの内覧会を経て13日〜15日まで一般公開された。一種の「デモカー」のような個体だという。 海外の試乗会ですでに約3万km走行し、展示後は「モビリティリゾートもてぎ」で、購入希望者向けの試乗会を行ったようだ。日本で既に数台のオーダーが入っているという。来年後半には、公道でも見られるかもしれない。 なお、「ネヴェーラ」の詳細は別項を立ててリポートしたい。また、本媒体のスタッフが、「もてぎ」の試乗会で、実際にに同乗することができたようだ。そちらのレポートもお待ちいただきたい。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★アイシン、EV関連事業に5,000億円を投資 ……9月14日に開催した「中長期事業戦略説明会」で、今後3年間で5,000億円を投資しEVなどへの対応を加速すると発表した。2027年に第3世代の「eアクスル」を投入するという。 ★★ジャガー、エンジン車の受注を今年末で終了 ……「F-タイプ」「XE」「XF」「XFスポーツブレイク」の生産を2024年モデルをもって終了する。「F-タイプ」は11月21日(火)、他3車種は12月19日(火)をもって受注も終了するとのこと。2025年以降はピュアEVのみを扱うブランドとなる。 ★★ルノー、商用車「トラフィック」のEVを発表 ……新型商用EV「トラフィック・バン・E-テック・エレクトリック」を本国で発表した。最高出力90kW(122ps)・最大トルク245Nm(25.9kgm)で、航続距離は297km(WLTP値)。最高速度を90km/hに抑えたロングレンジ(322km)モデルも用意するという。 ★★AESC、バッテリーのマザー工場を茨城県茨城町に竣工 ……年間6GWhの生産能力を持つ工場で、従来品に比べてエネルギー密度を1.3倍、充電速度を35%短縮した次世代バッテリーの生産を2024年3月から開始するという。 ★スズキとパナソニックが電動車を共同開発 ……スズキとパナソニック サイクルテックが、電動アシスト自転車の駆動ユニットを活用した新型電動モビリティの共同開発に合意した。スズキが企画・実験と担当し、パナソニックが試作車の製作・駆動ユニットの提供を行なうという。 ★ホンダ、「モトコンポ」が復活 ……折りたたみのユニークなスクーター「モトコンポ」の後継となる新型EVスクーター「モトコンパクト」をアメリカで発表した。価格は1,000ドル(約14万8,000円)未満だという。 ★ZF、EVバス向けのモジュラー型ドライブユニットを発表 ……最高出力380kW(517ps)で3速のギアボックスを内蔵したユニット。急坂に対応し航続距離の延伸も期待できる。ユニット自体も小型なため、フルフラットの車内設計がしやすくなる。 ★ポルシェ、「タイカン」がEVの最大高度変化の新記録を樹立 ……「タイカン4・クロスツーリスモ」が、中国にある海抜マイナス218.845mのアイディン湖から、標高5,355.134mチベット・ホントゥダバン山の登山に成功し、ギネス記録を打ち立てたという。 ★エネチェンジ、病院へのEV用充電器の導入を推進 ……医療品物流のアルフレッサと協業し、同社の持つ医療機関ネットワークにEV用充電器の設置を進めるという。 ★新電元、商用EV向け急速充電器を改良 ……最高出力50kWの「SDQCシリーズ」を13年ぶりに改良。「SDQC2F50」として11月より発売する。課金決済をしないスタンドアロンタイプで、長時間の使用が可能。 ★プラゴ、EV充電ステーション事業推進のために新たに資金調達 ……日本政策金融公庫・新宿支店/三井住友銀行/りそな銀行・池袋支店から新たに協調融資を受けた。累計の調達額は13億1,700万円となった。 ★東京ガス、相模大野のマンションにEV用充電器を大量導入 ……野村不動産管理の新築分譲マンション「プラウドタワー相模大野クロス」<神奈川県相模原市南区>に、東京ガスのEV充電サービス「イーブイレスト」の導入が決定した。物件の平置き駐車場の全207区画に設置される。 ★京都のアパートメントホテルがEV用充電器を導入 ……全16室の高級アパートメントホテル「ホテルマステイ神宮道」<京都市東山区>に、テラモーターズのEV用充電設備「テラチャージ」を3基導入した。最高出力3kWの普通充電タイプとなる。 ★神戸市で自動運転小型EVバス「ミカ」の一般試乗会を開催 …神戸市の須磨海岸で9月23日(土)〜29日(金)まで開催する。走行区間は須磨海岸内管理用通路(JR須磨駅〜願いの椰子の木)で、運賃は無料。小型EVバス「ミカ」はエストニア製の車両で定員は8名。自動運転レベル4に対応している。 ★日産、「アリア」の駆動システムがアメリカで受賞 ……電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」が、アメリカの自動車媒体ワーズ社の「10ベストエンジン&推進システム」に選出されたという。 デイリーEVヘッドライン[2023.09.19]

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福井県永平寺町の自動運転レベル4で使用するヤマハ製EV。筆者撮影
TEXT:桃田 健史
福井県永平寺町の自動運転レベル4・EVが、岸田総理の視察を受けて全国から再注目

国は自動運転で、運転席に人がいない実質的な完全自動運転である自動運転レベル4の社会実装に向けた動きを加速させている。2023年9月中旬には、国が自動運転レベル4で高速道路での専用道の設定に加えて、一般道でも自動運転専用道を設置を検討していることについて報道があったばかりだ。そうした自動運転レベル4で先進的な試みを行っている福井県永平寺町を取材した。 遊歩道「参ロード」を使って走行 永平寺町の自動運転レベル4・EVが走行するのは、曹洞宗の大本山永平寺に近い2kmのコース。 ここは以前、鉄道が走っていたが現在では町の遊歩道「参ロード(まいろーど)」になっている場所だ。 参ロードの地中に電気を通す配線を埋設し、そこで発生する磁力を車体側が検知しながら走行する、電磁誘導線を使った自動運転システムである。 こうした自動運転はすでに、全国各地のゴルフ場で普及しており、永平寺町で使う自動運転EVもそうしたヤマハ製の市販品をベースに改良されたものだ。 走行機能に係わる車両スペックを見てみる。 まず、EVとしての駆動システムは鉛蓄電池を採用して後輪を動かす。充電は200V電源から行っている。 走行する様子は、まさにゴルフ場の自動カートであり、実際に試乗していてもゴルフ場カートと大きな違いは感じない。

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TEXT:小川フミオ
VWのリアリティ。製品開発責任者は量産ブランドのやるべきことが見えていた

EV時代に求められるのは、走行距離でもパワーでもない。エネルギーは、E-FUELでも水素でもない。電動化へ向かう現代に、VWは現実的な選択をしていくという。 カスタマーが求めているのは、短い充電時間 ーー今回の取材では、あたらしいOSを搭載したID.4に乗る機会がありました。ドライブフィールはたいへん好ましかったのですが、モデル改良における状況を教えてください。BEVにおいては、パワーを上げる方向なのか、走行距離を伸ばす方向なのか、どっちの要望が強いんですか? 「走行距離でもパワーでもないですね。カスタマーが求めているのは、短い充電時間です。急速充電ではご存知のように、2つの重要な要素があります。車両とチャージャー、ともに、できるだけ速い速度での大容量の充電が求められています」 ーー具体的に聞かせてください。 「私たちのターゲットは15分などで充電という短時間充電です。リロードのための時間が短いのは、メーカーに課せられたタスクと思っています。いっぽう、充電インフラは、政治的な判断になりますので、思うようにはいきません」 ーーメーカーは、あたらしいBEVを市場に投入するとき、高出力を喧伝しがちなような気がします。 「それがいちばん技術的に実現しやすいという事実があります。しかし実際の顧客の声を聞いていると、急速充電がもっと効率よくできたら、何百キロも走れるよ、と言われます。それは認識しています」 私たちはBEVに注力 ーーグループでE-FUELを研究されていると思いますが、VWブランドでも使う可能性はありますか。 「グループぜんたいが、将来的には、BEVですが、過渡的な燃料として、可能性のある燃料と考えられます。ただし、ご指摘があったように、コストの高い燃料です。なので、過渡的に使うのは、より価値の高いブランド、つまり、ポルシェやアウディにおいてでしょう。量産ブランドでは、おそらくPHEVを過渡的に使い、最終的には全モデルがBEVの方向にいくと私は思っております」 ーー水素の活用はどうでしょうか。 「私たちはBEVに注力しています、水素燃料は高すぎるので、プライベートセクターにおける利用というのは、現実的でないと思います。たとえば、スチールやプラスチック、航空、海運、化学などの分野では、水素エネルギーも考えられます。プライベートセクターにおいては、我々としてはBEV化だと思っています」 ーー自社でギガファクトリーなるバッテリー工場を作って世界各地で展開する計画が着々と進んでいますね。ドイツ、バレンシア、カナダなど進行中ですね。同時に、クルマからの給電、つまりV2HやV2Lが出来るようになれば、エネルギープロバイダーにもなれるのではないですか。 「エネルギープロバイダになるという計画は一切ありません。もちろんバッテリーを橋渡し的に使うといえばいいのか。クルマから電気を外部に供給したり、回生など使って車両に貯めた電気をほかの目的で使うことで、お金がセーブできたなどとよろこんでくださるユーザーもいらっしゃるかもしれません。そこまでなら技術的に可能ですが、それを拡大していって、積極的にエネルギーを外部に供給していく計画はありません」 <了>

TEXT:小川フミオ
VWはBEVとICEを両立? 中長期的なラインナップを製品開発責任者が語る

BEV(バッテリー電気自動車)化が進むなかで、VWは、IAAでは新型「パサート」でICE(内燃機関)用プラットフォームも発表した。インタビューのなかでは「MEBプラス」というBEVプラットフォームの計画もあるいう。ライナップとパワートレインのプランニングは、どうなっていくのか。 ICE用プラットフォームは、8〜10年は改良をかさねる ーーモデル計画についてうかがいます。この先ラインナップの数は増えますか? あるいは、減っていきますか? 「いま現在、私たちは、ICEとBEVと、パワートレインをみても、非常に多くのラインナップを持っております。ID.シリーズと名付けたBEVのモデル数は、ご存知のとおり、まだ限られていますけれど。ICEの生産をすぐ止めるかというと、ごくさいきん、MQBエボというICE用のプラットフォームを発表したばかりです」 ーーMQBエボは、23年のIAAモビリティで発表された新型パサートにも使われるプラットフォームですね。 「MQBエボは、このさき、最低でも8年から10年ぐらいは使用していく予定です。ただし、今回開発して、これで完成、あとは何もしないというわけではないです。約2年ごとに、新しい技術や新しい機能を投入していくつもりです」 ーーでは、ICEモデルの数は維持していくのですか。 「欧州においてはICEモデルを減らしていくのは間違いないです。他の市場に関しては事情は違う場合がありますが、欧州では、26年ぐらいからBEVを増やしていきます」 ーーいまのID.シリーズも、やはり改良を重ねていきますか。 「はい、明確なプランをもっています、MEBプラスというプラットフォームです。MQBエボと同じように、つねに最適化をしていくというアイディアをベースに開発するものです。いまのMEBの進化形ですね」 ーーID.2 allや、ID.GTIコンセプトは、いまのID.シリーズと違い、モーターをフロントに持ってきて、前輪を駆動するといいますね。なぜ、わざわざ180度、変えるんでしょうか。 「端的に理由を言うと、コストです。ドライブトレインをフロントに集めたほうが、コスト節約になるのです。(たとえばBEVでは電気配線に使うハーネスのコストが高く、ID.2allなどではそれを短くすることでコストダウンが図れる、とインタビューに同席していたVWの広報担当者が説明してくれた)。あともうひとつ、ターゲット顧客が前輪駆動車の運転に慣れていることも考慮しています」 sameではないけど、similarになる ーードライブフィールはどうでしょう。ICEのゴルフGTIとID.GTIコンセプトと比べた場合、ドライブフィールも同じようにしようと考えていますか。 「ゴルフGTIの本質は、俊敏であり、正確な操作性が魅力になっています。ステアリングやダンパーも、非常にきびきびとした走りを目的とした設定です。同時に、スムーズであり、乗っていて快適でなくてはなりません。街乗りや遠出を含めて、すべての点でICEのゴルフGTIは、完璧な回答だと思っています」 ーーそれがめざすところですか。 「電動化にあたっても、このように幅広い使い方に対応しなくてはならないと認識しています。ゴルフGTIのDNAをいかにBEVで実現していくか。ただし、ICEとBEVとでは、完全におなじクルマにはならないです。パワートレインの特性が、ICEとBEVとではちがってきます。それでも、いわゆるsameではないけど、similarになるのではないでしょうか」 有言不実行よりは不言実行 ーーID.GTIコンセプトの資料を読むと、ゴルフGTIクラブスポーツのようなフロントディファンレシャルロックも採用されるとありますね。 「導入を決めています、えっと、これをなんて呼ぶか。じつは1時間前に、フロントアクスル・ロックにしようと決まったんです。なかなかすんなりとおぼえられないんですが(笑)。ドライビングエクスペリエンスマネージャーを搭載し、ダンパーの設定など、非常に俊敏で、正確なドライビングフィールをめざします」 ーーパワーは。ID.2allと、ID.GTIコンセプトで、どれぐらい違いますか。 「ドライブフィールとパワーにおいて、2車の差別化を図っていきます。ID.GTIコンセプトは、(全輪駆動の)ゴルフRの未来形ではないことも、ここで申し上げておきます。数字に関しては、1年後には言えるかもしれませんけど、今日は言えないです。有言不実行よりは不言実行の方がいいと思っています(笑)。いま高い数値を出して、あとで、実現できませんでしたというよりは、ちゃんとしたことを申し上げたほうがいいですよね」 <Vol.3へ続く>

TAG: #EV #VW #戦略
TEXT:小川フミオ
どうなる?IDシリーズのミライ。VW製品開発責任者に、その展望を訊く

IAAモビリティでのVWの存在感は大きく、発表した「ID.GTIコンセプト」は注目を集めていた。ID.4と異なるドライブトレインを持つこのモデルをみて、これからのラインナップへ期待を高めて小川フミオが製品開発責任者にインタビューをした。 180度かわったドライブトレイン 2023年、ミュンヘンで開催された自動車ショー「IAAモビリティ」の目玉ともいえるのが、フォルクスワーゲン(VW)が発表した「ID.GTIコンセプト」。 興味ぶかかったのは、このモデルと、このモデルのベースになる「ID.2 all」(2025年末発表予定)のドライブトレインだ。 日本には「ID.4」が導入されているVWのBEV「ID.」シリーズ。ドライブトレインの基本レイアウトは、リアモーターの後輪駆動。 それに対して、上記「ID.2 all」と「ID.GTIコンセプト」は、車名のとおりいまはコンセプトモデルとはいえ、フロントモーターと前輪駆動方式と、いわば180度ちがっている。 なぜわざわざ変えるのだろう? そんな疑問を含めて、フォルクスワーゲンのボードメンバーで、製品開発を統括するカイ・グリューニッツ氏にインタビューを行った。 ーーID.GTIコンセプトを作るのは、既存のGTIオーナーを安心させて、将来的にICEのGTIからの乗り換えをうながすのが目的ですか。 「そうですね。すでにクルマを所有しているひとが、次にBEVを選んでくれるよう説得しなければなりません。不安材料を取り除くとともに、積極的な購買動機を持っていただきたいのです」 ーーそのときに”武器”になるのが、GTIのヘリティッジだったのですね。 「まず、市場で評価されるVWらしさとは何であるかということを、私たちは考えました。そして、過去のレガシー、ヒストリー、ブランドといった点から、VWをVWたらしめているものは何であるかということを、突き詰めたのです」 ーー結果たどりついたのが、ID.GTIコンセプトですか。 「(乗り換えへの)説得力を持たせるためのデザイン。そのためには、内燃機関と似たようなデザインがまず大事だよねと。BEVにスイッチしても安全であるというメッセージを、デザインに込めるべきだと考えました。同時に、新しいデザインは、アグレッシブなものでなく、むしろ古典的な要素をしっかり盛り込もうと。そう意思決定しました」 2万ユーロ以下のモデルや大きなサイズのSUVを計画中! ーーでは、ID.2allとID.GTIコンセプトは、いくつもある選択肢のひとつ、というより、VWのラインナップにおいて、大きな柱になりうるものだということでしょうか。 「フォルクスワーゲンをフォルクスワーゲンたらしめているものは何かと考え、(ヘッド・オブ・デザインの)アンドレアス・ミント氏が発表したとおり、デザインの3原則をうち立てました。Stable(安定性)、Likeable(好感度)、Exciting(刺激)です。それをID.2 allでかたちにしました。2025年にID.2allを発表し、そのあと、同様のコンセプトをすべての車両に展開する予定でいます」 ーーそのときに新しいBEVのシリーズは「ID.」の名前を継続して使いますか。現在のラインナップを参考にすると、ID.2allより小さな数字はID.1しかない。いっぽう、ID.7はすでに全長が5m近いサイズですね。ID.8があるとしたら、そうとう大きなクルマになるしかないですよね。 「ID.2allよりも価格の低い、2万ユーロ以下のモデルはいますでに検討はしています。ID.2allよりも大きいけれど、ID.3やID.4との間に入るモデルも計画にあります。それ以外にも、SUV、より大きなサイズのSUVもモデル計画の中に入っています。期待してお待ちください」 カイ・グリューニッツ(Kai Grünitz)氏プロフィール フォルクスワーゲン・ブランド・ボードメンバー/ブランド技術開発取締役 開発および管理部門でさまざまな職務を歴任。2002〜12年に2012〜14年VWブランド車両開発担当、2012〜14年にVW商用車部門事務総長、またシュコダ開発部門エグゼクティブアシスタントを兼任する。2014〜16年VW商用車部門メカトロニクス・シャシー・システム責任者、2017〜2020年VW商用車部門電気電子開発およびシャシーシステム開発責任者、2020〜22年VW商用車部門技術開発責任者を歴任。2022年10月からVWブランド技術開発取締役に就任。機械工学と工業工学の学位を持つ。 <Vol.2へ続く>

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